UDプロジェクト

鳥取・島根ユニバーサルデザイン視察

日時:2023年12月13日(水)~15日(金) 2泊3日

場所:金沢駅発着 松江市(なにわ一水宿泊)~石見銀山(中村ブレイス見学)~鳥取市

参加者:11名 (UDi理事、監事、個人会員、事務局)

一昨年のUDiシンポジウムで講演を頂いた「なにわ一水」を勝谷社長にご案内いただき視察し、宿泊をしました。なにわ一水は、一般財団法人国際ユニヴァーサルデザイン協議会主催の「IAUD国際デザイン賞2020」住宅・建築部門で、旅館やホテルとしては初めての金賞を受賞した、上質を知る、大人のための温泉宿です。

14日は石見銀山にある義肢装具メーカーの中村ブレイスを訪問しました。石見銀山の空き家を買い取ってショップや移住者の住宅などにリノベーションするなど、石見銀山エリアの再生を行っています。

その他、米子のまちづくり、鳥取民芸美術館を訪問するツアーとなりました

 

1日目

■なにわ一水

なにわ一水は、人生に寄り添う旅館として「誰もが旅行しやすいユニバーサルツーリズム」を実現するため、ハード面・ソフト面・ハート面においてすべてのお客様に喜んでいただけることを目指しています。

2016年の全館リニューアルの際、個人旅行にシフトしつつある状況をふまえ、壁を壊してバリアフリーにしたことの評判がよかったため、バリアフリーに取り組み始めました。バリアフリー改修を行うことで、従業員の作業効率は向上し、売上アップにもつながりました。設計者は他の旅館でも取り入れたいとの思いを持ち、地域全体でのスパイラルアップが図られるようになり、行政や子どもたちへ施設の見学を通したユニバーサルデザイン教育の実施や、旅館組合による全従業員に対する障がいのある方への接し方講習会の実施といった地域全体でのユニバーサルデザインの牽引役になっています。金融機関、教育機関、建築設計、行政との連携をし、周囲への旅館へ大きな影響を与えています。

勝谷社長のご案内のもと、館内を見学させていただきました。

車いすでも手にとりやすい高さの売店
段差はスロープ改修し、完全バリアフリーの室内
2部屋を1部屋に改修
広々とした室内
大会場の宴会場だった食堂を、個室に改修。地域の避難所になるよう備品庫にしている。

バリアフリーに限らず、小さなことから大きなことまで様々な改善を速やかに行っているなにわ一水。お客様からのアンケートで得られた意見はすぐに全従業員に共有しており、全員参加で検討、対応していく姿勢を持っています。

実際にお話しを聞きながらご案内いただき、現場を共有し体験することができ、気付きに対して正面から対応し改善を繰り返していく姿勢を実感することができ、魅力のある宿である所以がわかりました。

宿から見た宍道湖の朝焼け

2日目

■中村ブレイス

中村ブレイスは、世界遺産石見銀山のある町で、義肢装具製品の研究・開発を行う会社です。1974年の創業から患者と向き合い、新素材や新技術を取り入れながら研究を重ね、シリコーンゴム製のインソールや膝のサポーターなどは全国に先駆けて既製品の義肢装具を開発しており、世界から必要とされる製品を作っています。

創業の地である大森町は昭和30年代には少子化や人口減少が進み、ゴーストタウン化しており、石見銀山の町を蘇らせたい思いからまちなみの保全活動を行い、歴史や景観を引き継ぎ、まちに人を呼び込んでいます。

シリコーンゴム製の義肢装具
これまでの取組をお話いただく

石見銀山の古民家を再生させることで、町に暮らしや文化を育みたいと、約60軒の古民家を改築・改修しました。重要伝統的建造物群保存地区に選定されているため、壊すのではなく再生しまちなみを保全しています。補助金等はもらわずに自己負担で改修し賃貸しています。

ホールやパン屋、図書館、シェアスペースなどに生まれ変わっており、多彩な活用方法で地元の人だけでなく観光客や近隣の住民など、いろいろな人が訪れる機会になっています。Iターンで住む若者も増え、保育園の園児数も増えています。

中村社長に再生した古民家を含め、まちをご案内いただきました。

古くからの建物が並ぶ大森のまちなみ
古民家再生をしたオペラハウス

2023年島根県立大学と共同し、旧商家である「松原家住宅」を改修しオープンした「石見銀山まちを楽しくするライブラリー」。

図書館やカフェ、コワーキングスペース、ギャラリーも有する複合施設。町民、近隣住民、観光客など広く利用しており、島根県立大学のサテライトキャンパスにもなっている。

選書された本をディスプレイした図書館
くつろげる空間のカフェスペース

「今後も人が訪れるまちを維持できるよう、まちの良さを伝え続けていきたい」との言葉から、まちに対する想いが強く伝わってきました。

■米子市内散策

クルマナオキ建築設計事務所 来間氏によるご案内で、村野藤吾設計の米子市公会堂を見学しました。米子市公会堂は山陰随一のホールとして1958年に村野藤吾の設計で完成しました。

公会堂建設は自治会連合会が要望し、当時財政が厳しかった米子市は「1日1人1円募金運動」が起こり寄付を募り、市民の熱い思いによって建設された公会堂。

完成から22年後の1980年に大規模改修され、その改修の設計も村野が担い、村野によって二度設計された希有な建築と言えます。

米子市公会堂の外観
村野の意匠が随所に現れるロビー

案内いただいた来間氏は、米子市出身で進学を機に上京。東京で仕事を続けた後、結婚を機に米子市へUターンをされ、米子市の街なかを活用したプロジェクトを実施しています。

米子のまちの魅力が建物にも表れていることを実感しました。

3日目

■鳥取市内散策

鳥取民藝美術館の見学をしました。鳥取の医師吉田璋也が、民衆的工藝すなわち「民藝の美」の思想の普及と新たな創造の指針を示すために、鳥取の民藝運動の拠点として創設されました。

民藝の美と生活を結ぶことが、よりよい社会をつくることになるという信念を感じ取りました。

鳥取民藝美術館