2023.04.26 UDプロジェクト KUNTANism連携事業 ○△☐茶会 九谷焼作家・牟田陽日さんと作った茶碗で対話から違いを体感する茶会 誰もが楽しめるお茶会にしたい。その思いから始まったユニバーサルな茶会が〇△☐茶会です。異なる人間同士が、対話を通じて、互いの存在や自己と向かい合い、新たな可能性を探る。例えば、車椅子ユーザーや弱視の方といった方が、さりげない所作で自然に茶会に参加する。そのような茶会の情景を実現したい。それが私たちの願いであり、目標です。これまで鈴木大拙館(2017年)、しいのき迎賓館(2019年)に〇△☐茶会を開催してきました。自分たちが作った茶碗を用い、茶席に集う参加者どうしの対話を行うことで、お互いのものの感じ方や考え方を享受する、一つのスタイルを創り上げました。 今回は、九谷焼作家として活躍する牟田陽日さんと、目の不自由な方や車椅子ユーザーのみなさんと一緒に制作した茶碗を使い、お茶会を開催しました。 1年前に、牟田さんと身体がデリケートな方々とともに茶碗の制作を行いました。3回にわけて時間をかけて制作した茶碗のテーマは「海」。それぞれの思い出を茶碗に込めました。(制作の様子は、過去の記事をご覧ください。)・茶碗制作ワークショップ#1 形作り・茶碗制作ワークショップ#2 下絵付けと釉がけ・茶碗制作ワークショップ#3 上絵付け・茶碗制作ワークショップ#4 茶碗お披露目茶会 〇△☐茶会 日時:2022年11月20日(日) 展示 13:00~18:00 茶席 ①13:30~ ②15:00~ ③16:30~ 亭主:川崎 宗晃(表千家) ナビゲーター:荒井利春(UDi理事長)、牟田陽日(九谷焼作家) 会場:ウェルネスハウスSARAI (能美市石子町ハ147-1) 主催:一般社団法人ユニバーサルデザインいしかわ、KUTANism実行委員会 個性豊かな茶碗が並ぶ 全ての茶碗を手に取り選ぶ人も 制作した茶碗を1列に並べて、その中から参加者は見て・触れて、気になる茶碗を選びます。一つ一つの茶碗と向き合い、自分の感覚を研ぎ澄ます時間。 九谷焼作家 牟田陽日(むた ようか)さん UDi理事長 荒井利春さん 茶会の始まりは、銅鑼(どら)の音が合図です。少しの緊張感が茶会への期待と楽しみを高めます。一人ひとり順に入室し、席へ座ると茶会の始まり。ナビゲーターは作家の牟田さんとUDi理事長の荒井さんが務めました。 のどかな雰囲気が味わえる会場 茶碗に込めた思いやエピソードなどをナビゲーターの二人が話し、参加者は茶碗を選んだ理由やお茶を飲んだ感想など、和やかな対話の時間を紡ぎます。 銘「三友」 牟田さん作の器にて まずはお菓子をいただきます。小松市にある「行松旭松堂」に作っていただいたお菓子の銘は「三友」。○△☐茶会のコンセプトやテーマに合ったお菓子を作っていただき、大納言小豆・加賀丸芋・五郎島金時/栗の3つの味がなだらかに混ざり合うもの。茶碗のテーマが海であることから、波をイメージさせる形に。異なる味がお互いを尊重しながら混ざり合い、心地よさを生み出す。この茶会が目指す関係性を表しています。 お抹茶は表千家教授の川崎宗晃先生に点てていただきました。川崎先生は茶碗づくりのワークショップから一緒に参加され、新しい茶会のスタイルに発見があったようです。「普段の茶道では決まり事が多い世界ですが、この茶会では想像を働かせ、感性が豊かになる機会になります。」 一碗ずつ順番にいただき、味わいます。自分で選んだ茶碗で飲み、感じたことを素直に言葉にします。 「どうしてこの茶碗を選んだか」「実際に飲んでみてどう感じたか」 自分の思いを言葉にすることで自分の感覚と向き合い、参加者同士が共有することで新しい扉が開くような体験。そのような対話の時間になりました。 ワークショップでお茶碗を作られた車椅子ユーザーや弱視の方、能美市に住む小学生や作家などが参加し、同じ場を共有する。参加者によって全く違う感性を持っていることを実感します。茶碗の作者が同じ空間にいて、作家から直接思いを聞ける場面もありました。 新たな可能性をひらく 茶碗制作のワークショップから一緒に制作いただいた牟田陽日さん。 「作り手は、自分で作ったもので飲んでいただく場を共有したり、自分の作品でお茶を飲んだりすることがめったになく、とても貴重な機会。作っているだけでは作品は完成しないし、使い手がどのように感じ、どのように解釈するかによって、一つ一つのものが変わっていく。」 「一つ一つの器に作り手のストーリーがあり、選び、飲む使い手にもストーリーがある。○△☐茶会は多様な方が楽しみながら器と人との交流をする機会。作り手だけでなく、一緒にお茶を味わい、味わったものを言葉にして共有するという嬉しさを感じる。」と荒井さん。 今回の茶会では、九谷の地で開催できたことで、暮らしの中での新たな出会いや発見を味わえる機会になりました。たくさんの作家やお菓子をつくる職人がいて、作られたものを享受する文化が日常生活の中にある。これからも地域で暮らすみなさんとともに、文化的で創造的な関係性を創り上げていきたいです。